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最高裁判所第三小法廷 昭和24年(オ)52号 判決 1951年2月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士近藤亮太、加藤福蔵、寺尾元実の上告理由は、末尾添附の別紙記載のとおりである。

原審の認定した処によると上告人は被上告人を相手取り、借地権確認の訴を起し、その執行保全のために、昭和二二年一二月六日本件土地及びその地上にある小屋に対する被上告人の占有を解き上告人の委任する名古屋地方裁判所執行吏に、これが保管を命ずる、被上告人は右物件を使用し又はその現状を変更してはならない旨の仮処分を得て、上告人の代理人弁護士鈴木正路の委任を受けた名古屋地方裁判所執行吏佐藤徳次郎は同年同月十日右仮処分命令の執行をした。そして上告人は右仮処分の執行によつて前記執行吏の占有にある本件土地に立入り家屋を建てる工事を始めたので、これに対して被上告人申請による本件仮処分がなされ、本件仮処分は「本案訴訟事件の確定に至る迄債務者は債権者所有の本件宅地上に建物の建設工事をしてはならない、債務者は右宅地内に立入つてはならぬ、受任執行吏は適当な方法で右立入禁止竝に建物建設工事の停止を命じなくてはならない」趣旨のものであるというのである。按ずるに右原審の認定した事実によれば上告人の申請による前記仮処分により既に本件土地は執行吏の保管に委せられて居り、しかもなお原審の認定した処によると右仮処分においては執行吏は上告人に対しても右土地に立入り建築をすることを許可する権限も与えられて居ないというのであるから、上告人は被上告人申請の本件仮処分を俟つまでもなく、上告人申請の前記仮処分の執行がなされた以上、これにより本件宅地の上に建物の建設工事をすることは勿論本件土地に立入ることは許されないものといわなければならない。右の如く被上告人申請の本件仮処分の有無に拘わらず上告人は本件土地に立入り建築をすることは許されないものである以上本件仮処分取消による利益は上告人について存しないものといわざるを得ない。従つて上告人の本件仮処分取消の申立を排斥した原判決は論旨所論の点の如何に拘わらず結局正当であり論旨は総て理由なきに帰する。よつて本件上告を理由なしとし民訴法第三九六条第三八四条第八九条第九五条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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